生きたくなんてなかった
医者は驚いていた。
俺が記憶を取り戻したからじゃなく、坦々とその事を聞いてきたことに
だから言ったんだ
「今は紀本と綾女がいるから」
笑顔を浮かべてそう。
そしたら、先生も話してくれた
あの日何が起きたのかを…
「君達の橋本家の乗った車に、トラックが突っ込んで来た……
救急車や、警察が到着したときには既に父さんと母さんは手遅れだった。
その時点でまだ息があったのは、俺と柚の二人だけ…
二人はこの病院の救命病棟に運ばれ、緊急手術が行われた。
俺はそこで命の心配がないくらいまで回復し、あの個室に移された。
だけど、柚はまだ七歳で幼かったこともあって手術に耐えられなく、心臓がとまった…