生きたくなんてなかった




医者は驚いていた。


俺が記憶を取り戻したからじゃなく、坦々とその事を聞いてきたことに


だから言ったんだ


「今は紀本と綾女がいるから」


笑顔を浮かべてそう。


そしたら、先生も話してくれた


あの日何が起きたのかを…


「君達の橋本家の乗った車に、トラックが突っ込んで来た……


救急車や、警察が到着したときには既に父さんと母さんは手遅れだった。


その時点でまだ息があったのは、俺と柚の二人だけ…


二人はこの病院の救命病棟に運ばれ、緊急手術が行われた。


俺はそこで命の心配がないくらいまで回復し、あの個室に移された。


だけど、柚はまだ七歳で幼かったこともあって手術に耐えられなく、心臓がとまった…










< 21 / 94 >

この作品をシェア

pagetop