生きたくなんてなかった







それは突然やって来た。


家族で旅行に行ったあの日


楽しくて、幸せだったのに、それが最後の旅行になった。


「母さん、柚のやつ寝やがった」


「疲れたんでしょ。
あんなにはしゃいだから」


隣で気持ち良さそうに眠ってる妹、無邪気な寝顔に癒される。


「恭乎も寝ていいぞ?」


「俺は平気だよ」


運転してる父さんも眠いはずなのに、俺だけ寝るなんてそんなことしない。


なんて、意地を張ってみるものの眠い…


「こんなとこで頑張らなくていいのに。
お父さんに似て、恭乎は変なとこ頑固よね」


「母さん、俺のどこが頑固なんだよ…」


二人の会話を聞いてると、自然と笑みがこぼれる。


「かにー!!!」





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