生きたくなんてなかった

3





柚の病室に入る前にもう一度覚悟を決めた。


要人には、ドナーが見つかったことをまだ伝えないで欲しいと頼んである。


多分、あいつはドナーが柚だと知れば移植を拒否するだろう。


だから、柚を楽にさせてやるのは移植が成功したのを見届けてから…


かなり先になるかも知れない。


でも、そのときは必ず来る。



その時、俺はどうなるんだろう…


「……………」

「………………」


微妙に聞こえてくる、要人と紀本の声をきき、考えるのをやめた。


その時どうなるかなんて、今考えたって分からないから。



「お前らうるせぇーよ!」


俺は今をまっすぐ生きよう。


柚といれる最後の時まで、あいつの兄貴として…









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