生きたくなんてなかった
向かった先はあの花に囲まれた場所…
そこについてすぐ、淡々と要人に話したことと同じことを紀本にも話した。
黙って聞いていたあいつは、俺が口を閉じたあと静かに涙を流した。
そんな紀本の頭を撫でる。
妹と同じ名前のこいつを、どこか壊れ物を扱うような接し方をしてる自分がいることに気づいていた。
柚と紀本は違う
そう分かってるのに、どうしても重ねてる自分がいた。
要人が妹と柚を重ねてるように
俺は柚と紀本を重ねていた。
要人の手術が成功した
その事を聞いた時も、紀本は涙を流していた。
そんな紀本を見て、ズキンと心が痛くなったことに、この時の俺は気づいてなかった。