生きたくなんてなかった



入院して約1年


俺は完全と言っていいぐらいまで回復していた


しかし、それとは反対に紀本は大部屋から個別の部屋に移された。


夜に吐血した紀本


本人の意志とは反対に病は彼女の体を着実に蝕んでいた。


先生から俺の退院の話を聞き


要人と二人で交互に毎日お見舞いに来よう


そう約束した。


「苦しいよ」


弱音を決して吐かなかったあいつが、最近ポロポロと吐くようになったのもこの頃だった。


たくさんの薬を飲み


抗がん剤治療の副作用で抜けた髪


苦しんでる紀本を傍で支えながら、自分の思いに気づき始めていた。







俺は紀本に恋をしてる











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