[短編]美容師だって恋をする
私の愛しい彼氏様
高速を一時間も走らせると


僕の実家まであと少し。夏の間には会いに行きたい僕のおやじ

僕に店を譲ってから

都会を離れ一人田舎暮らしをしていた。

母は3年前に他界し

おやじは一人

年に何回かはこうして様子を見に行く。

「おぅ・・・来たか。」おやじはすっかり畑なんかやってて

着いたと思えば

カゴを渡され

「取ってけ!」って僕たちはこの農家のノリに着いていけない。

それでも

マミは喜んで野菜を取っていく。

「・・・んめ。」(うまい)マミはトマトをかじってそういった。

そうだった。

マミは東北出身で

このナマリは可愛らしく

おやじも一発で彼女を気に入った。

「うまいか・・・」おやじは勝ち誇ったようにトマトを頬張る。

父とマミと僕

無心に野菜を収穫していた。

「シュウのお父さんは面白いわ~」マミはケラケラ笑う。

微笑ましかった。

それからここには2日間くらい滞在することに。

「マミ・・・連絡とかしなくていいの?」

マミにも両親はいる。

この夏は忙しく

マミは実家に帰れていない。

「そうだね。連絡する。」



「ゆっくりしてけや。」

おやじはそう言うなり

今度はビニールハウスに消えて行ってしまった。


「こんなところ・・・好き?」僕はマミに聞いてみた。

「うんうん。」

マミの心は癒されているのか

ここに連れてきて良かったような・・・

マミとゆっくりな時間は

僕も癒されていく。








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