[短編]美容師だって恋をする
マミの黒くて長いロングヘア

僕はこの清楚な感じがマミにはピッタリと思っていたんだけど、


今回は肩ぐらいまで思いっ切って切ってほしいとの注文だった。


長さにして20センチ以上。女性がこんなに髪をバッサリきるなんて、

ここに触れていいものか・・・

でも、今日はまだ初対面だったし、20代女性のプライベートまで踏み込む勇気はなかった。

ブローも終えて、鏡をあて、マミに最後の確認をする。

「今日はこんな感じで・・・いいかな~?」

「ハイ。」 マミは嬉しそうに答えてくれて

僕は本日、大きな任務を終了した気分で

名刺を渡した。

沢田 周 マミはすかさず、「シュウさんね。」って。

うん・・・いや・・ハイ。 僕は恥ずかしかった。

いつもの男常連には「沢田扱い」だったから

別れた彼女以来だった

女性にシュウって呼ばれたのは。

マミは軽快に店を後にした

店の外から地上へ階段を駆け上がる

マミの後ろ姿は初々しく

サラサラ揺れる後ろ髪は

僕の狙いどおりに美しく

自信をもって送りだせたのだった。
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