お前は僕の所有物…【BL】
水野sideー

記憶喪失だった。
薫君は様々な事を忘れていた。

弟の事、僕の事…
そして一番大切に想っていた千佳花君まで忘れてしまうなんて…

でも、表情を取り戻していた。
笑顔、切ない顔、微笑み…
色々な顔を…
無表情じゃなくて、
ちゃんと表情を取り戻していた。

軽く声を掛けたら神妙そうな顔をして
僕の名前を呼んだ。

千佳花君がずっと握っていた左手を
右手で握っていて、
無意識なのか、
凄く切なそうな顔をしていた。

聞きたい事が山程ある事も知ってるし
思い出せなくて辛い事もよくわかる。

でも、
そう簡単に記憶喪失は治る訳じゃない。
ゆっくり時間を掛けないと
記憶は取り戻せない…

だから

「ゆっくりでいいんだよ…薫君…」

こういう言葉しか言えないけど

薫君なら絶対に思い出せるよ…
絶対大丈夫だよ…
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