バカビト
「大丈夫?」

「うん~」

「これ、分る?」

「触れてんのはなんとなく…。感覚は微妙だけど」


央詩が私の口元をゆっくりと触る。
顔が近い。
キレイな整った顔、性格も良いんだからモテるに決まってるよな。


「圭、そのうち麻酔切れると思うけど…。辛いなら喋らずに口、閉じときな」

「ん」

「圭が喋らないのは無理でしょ」

「大丈夫だよ!!」

「無理だって。黙る気ないもん」

「圭、辛いんだろ?良い子にしなさい」


央詩は、小さな頃からずっと私を妹扱いする。

嫌な気はしなかったし、良いと思ってたけど、高校三年生になってからなんとなくそれが嫌になり始めた。


「央詩のバカ」

「は?」

「ちょっと圭、王子心配してるだけじゃん。どうしたの?」

「もう良い」


訳の分らない気分になって教室を飛び込出る。

口元は感覚の無いまま。

何故か空しくて、階段の途中で立ち止まる。


「…ストーカー?」

「違います」

「ありがとう」


横に央詩が並ぶ。

追ってくれるって分かってたから逃げたんだけど。
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