バカビト
「良いよ。二人でいた方が楽でしょ?」

「うん」

「圭のしたい事なんてみえみえだから。二人になりたかったんだよね?」

「うん」


よしよしと央詩に撫でられる。
これは完ぺきに、妹扱いだ。


「ねぇ…」

「ん?」

「央詩は何で、私と一緒にいてくれるの?」

「なんでだろうね」

「央詩…大好きだよ」

「俺も好きだよ?」


央詩が私に言う“スキ”と私の“スキ”は重さも意味も全く違う。


央詩は私の気持ちをすぐに読み取って優しくしてくれる。

なのに、この気持ちだけは理解してくれない。


「あ、麻酔とれてきたかも」

「ほんとに?」

「うん」


央詩がまた、私の頬に触れる。
何となくビクッとしてしまって、目をつむる。


「何、ビクついてんの」


央詩の笑ったような声で、私はソッと目を開ける。
と、フワッと央詩の香りがした。


「え…」

「圭、ごめん」


軽く触れたと思った唇は、今度は強く押し付けられる。


「ちょっ、お…」

「まじ、ごめん」


唇が離れたと思ったら強く抱き締められた。
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