バカビト
顔を覗き込むと、開き直った様子のひーちゃん。


「だって、圭も王子もそのくらいしないとお互いの気持ちなんて気が付かないでしょ?」


図星なので何も言えない。
ひーちゃんは私を見ながら言った。


「だから、逃げてる場合じゃないの」

「ひな子、俺らで遊ぶなよ」

「いや~、王子が怒ったぁ」


ひーちゃんが遊んでいるように、手で両耳をふさいで逃げて行ってしまった。


「圭?」


呼ばれた勢いで、央詩をみる。
目が合うとすぐに央詩がニコッと笑った。


「俺と付き合って」

「…本気?」

「ひな子にあれだけ言われても信じない?多分、このクラスの全員が俺が圭が好きだって知ってるよ」

「うそ…」

「本当だから」


だから今、皆が静かに私たちを見守ってくれてるんだ。
答えを出さなきゃ。
私も好き、ただそれだけなのに何故か言葉が出て来ない。


「私は、あの…」


央詩相手にめちゃくちゃ緊張してる。
いつもの央詩。
この教室でいつもと違うのは、私だけだ。
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