バカビト
「私は…」
俯こうと思ったとき、央詩がサッと私の顔を両手で持って触れるだけのキスをした。
「なんで、キス…」
「好きだからしたい。好きだから付き合いたい。違う?」
「違わないけど…」
「圭、俺のこと好き?」
「…うん、大好き。央詩のこと大好きです」
「圭、おいで?」
「ん…」
央詩が両手を広げる。
本当に王子様のように見えて、私がお姫様みたいで本当に幸せだ。
央詩の胸に飛び込んで、ギュッと抱き付く。
央詩も私をしっかりと抱き締めてくれる。
そしてまた、キスをした。
これは恋人としてのファーストキス。
心から幸せだと思いました。
「やっとくっついた」
「良かった良かった」
「私、いつ言うのか。どっちが言うのかって心配でさぁ」
途端に教室の中が賑やかになる。
シンとしていた皆が一斉に話し始めたのだ。
そうだ。
こいつらはこんな奴らだ。
「皆…もうちょっとカップルの時間を味あわせてくれても良いんじゃないですか?」
「え~、そんなの無理」
と、逃げたひーちゃんが戻って来た。