アイドル目指します!
「はぁ…っ、はぁ」
校門まであと少し…!
間に合って!
あたしはそう願ったが、神様はいないらしい。
生活指導の鬼崎が校門に向かって歩いている。
「あ、葵!鬼崎が!」
「えっ!?…本当だ…ヤバ!」
でも、このままなら…間に合う!?
――そう、思ったけれど。
この世には神様なんていないらしい。
あと校門まで数メートルの所で鬼崎に門を閉められた。
「「「あぁっ!!!」」」
あたし達は揃って声をあげた。
………ん?今、あたしと葵以外の他の人の声も聞こえたような…?
不思議に思って振り向くと…
「あ、上沢。」
――後ろにはクラスメイトの男子、上沢 優(カミザワ ユウ)がいた。
「よっ!幸村は遠藤と違って相変わらず冴えない顔してんな〜」
ムカ。朝からなんなの。
でも、言い返せない。
あたしの顔が冴えてないのは本当だし、それに…
コイツ、イケメンなんだもん。
長すぎず、でも短すぎずのミルクチョコレート色の髪。
吸い込まれそうな髪と同じ色の瞳。
しかも身長は175ときた。
コイツをイケメンと呼ばずになんと呼ぶのだろうか。
でもやっぱりムカツク。
なによ、自分がイケメンだからって!
「言われなくても分かってるよ!」
「そーかそーか。なら宜しい。」
「……葵。コイツ、殴ってもいいかな?☆」
ニコッ
「理穂!?だ、ダメだよ!」
「ヤダ〜、理穂ちゃん怖〜い☆」
「理穂ちゃんって呼ぶな。クソ沢。」
「り、理穂、落ち着いて!」
「…………お前ら、俺の存在を忘れてないか?」
「「「あ…、鬼崎…先生。」」」
鬼崎は、そういうと門を開けてくれた。……が、
「早く教室に行け!あと、全員…放課後、生活指導室まで来い!」
「「「ええっ!?」」」
「早く行け!」
鬼崎、怖い。
顔が本気だ…
そう思ったあたしは葵と一緒に全速力で教室まで走った。
あー、もう!全部、上沢のせいだ!