アルデンテ~君の知らない物語~
 「おめでとー!」

睦とあすかが駆け寄ってきた。

「やったじゃん。玲奈、きぃ」

「うん、マジうれしい!」

「ちょ、玲奈。あんた真太郎にコクったら?」

「え、無理だってまだ」

「そんなこと言ってないで。いつやるか」

「今でしょ!」

「みんな乗るなよ!無理だってそんな勇気ないし、それに失恋したくない」

「もう。告白しちゃえばいいじゃん」

「いやだよ」

「えーっ!」

あすかが、バシバシ私をたたいてくる。

「んーもぅ!しょうがないな!」

「よしっ!んじゃ成功したらアイスおごるからね☆」

「マジ?!やった^-^あたって砕けるわ!」

「てか部活。行かなきゃ。あすかは今日もサボリー?」

「うんwwむつみ達とは違って私はさぼるのよーんw」

「んじゃね。あすか」

「ばいびー」

 

その日の部活は、ずっと真太郎のことを考えてた。

頂上オーバーも、アンダーも。ラダーも、八の字も。球出しも。

先輩のかけごえなんて上の空。

ずっと、考えてた。

「前川!なにボーっとしてんの、妄想でもしてんのか?!」

先輩に注意される、

「あ、すいませんっ」

校庭に目を向ける。

サッカー部の姿が見える。

真太郎は、どこだろう。

頑張って、練習してるよね。きっと

私も頑張らなきゃ。

セミの鳴き声がうるさく鳴り響く。

汗と靴の音の体育館。

夏は、始まったばかりだ。
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