最愛HONEY
最愛HONEY
私の旦那さま
「…あ。西野さん、それが終わったら上がって大丈夫よ。」
入力が終わって、それをプリントアウトした書類をファイルに閉じて…
いつもの作業を終えたところで、“先輩”の佐々木さんが戻ってきた。
「え…?でも、まだ…」
時計を見れば、きっかり定刻を指してるけど…
確か、ラストの仕事はまだあったはず。
「ああ、大丈夫。あとは私がやっておくから…と言っても、ここを片付けるだけなんだけどね。」
ふふっと笑いながら、佐々木さんが指差したのは受付周りのデスク。
やたらテキスト類が散乱してるのは、ついさっきまでいた中学生集団のせい?
……まぁ、いいや。
さすが佐々木さん。
私が書類作りに戸惑ってる間に、他の仕事はすべて終わらせてくれたらしい。
本当に尊敬するなぁ…
私も早く、1人でもこなせるようにならないとね。
「お言葉に甘えて…。お先に失礼しますっ」
感謝しつつも、私は荷物を持って急いで立ち上がった。
目指すところは…
「…あ、そうそう。“塾長”は、まだ部屋で仕事してたわよ。」
走り出した私の背中に、親切すぎる佐々木さんの声が響いた。
< 1 / 57 >