最愛HONEY
「ヤマトって…“あの”ヤマトっ?」
思わず叫んでしまった私に満足気に頷く彼。
そうだよ…
この顔を、私はよく知っている。
髪は黒くなってるし、スーツだし、“大学生”だし…?
あの頃に比べてすっかりマトモになってたから、気づかなかったけど…
よくよく見れば、あの頃の面影を残したまんまだ。
うわぁ…
「ひっでーよなぁ。俺はすぐにわかったのに、ナオは言われるまでわかんないとは…」
「…ごめん。」
「だいたいさ、それ見てピンとこなかった?名前も写真も載ってるじゃん?」
ヤマトが指したのは、私が手にしている書類のファイル。
確かに、1番上には写真付きの履歴書が…
「だっ…だって…私、ヤマトのフルネームも…漢字すら知らないもんっ」
私にとって、ヤマトは“ヤマト”だったから。
それ以外は、何にも知らない。
私たちはそれで成り立っていたから――
「…まぁ、いいや。」
ふっ、と。
表情を弛めて、ヤマトが私をまっすぐに見つめた。
…何?
「お前がこうして、まっとうな生活をしてて安心したよ。」
「え…?」
「これでもずっと、心配してたんだぜ?お前がまだ、あの世界から抜け出せずにいるんじゃないか、って…」