最愛HONEY
「失礼しまーす。」
塾があるのは、雑居ビルのワンフロア。
狭い事務所ながら、ここだけは独立した一室になっていて。
基本、塾長以外は立ち入り禁止。
だから…
「おつかれさまです。私はお先に失礼させていただきます…」
形式通りの挨拶を並べつつ中に入って、
後ろ手にこっそり…内側から鍵をかけた。
これでよし。
「…おつかれ。」
ちらりと部屋の主を見れば、こちらに背を向けて、パソコン画面に向かったまま。
振り返りもせず、生返事。
たぶん、誰が来てるかもわかってないよね?
……まったく。
何かに集中すると、いつもこれなんだから。
呆れつつも、むしろこれが好都合。
私はそっと。
足音を忍ばせて。
その背中に近づいて行った。
「龍ちゃんっ」