最愛HONEY
……そう。
昨日、私は“逃げた”んだ。
―――――……
―――……
「な…に…してんの?」
私たちのほうを見たまま、立ち尽くすヤマトと。
そんなヤマトの視線に、金縛りにあったみたいに動けなくなってしまった私。
龍ちゃんのほうすら見られなくて。
ただ、繋いだ手を握りしめていた。
「………。」
お互いに無言のまま、固まること数分…ううん、
実際には、十数秒とか…そんなものだったんだと思う。
ただ、やたら時間が長く感じただけで…
「ナオ、さっきのって…」
顔を強張らせたまま、ようやくヤマトが口を開きかけたとき、
「ヤマト!」
少し遠くから聞こえた声がそれを遮った。
「何やってんだよ?帰ろうぜ!」
はっとして振り返ったヤマトにつられて視線を向ければ、そこには同い年くらいの男の子数人がいて。
聞かなくても、ヤマトの“連れ”なんだってわかった。
「ごめん。私たちも急いでるから」
ヤマトが友達のほうに気を取られている隙に、私はそのまま龍ちゃんの手を引いて駆け出した。
「あ、おいっ、ナオっ!」
ヤマトの声を背中に受けながら…