最愛HONEY
「え…?」
ヤマトってば、何言ってるの?
そんなの…
「別に、アイツと別れて俺とつき合え…なんて言わないよ。でも、不倫だけはやめろ」
「だから、不倫じゃな…」
「俺が…俺ん家がどんなに苦労したか、お前はよく知ってるだろ?」
……あ。
「俺、話したよな?5年前、お前が家のことで悩んでるとき…」
そうだった…
なんで忘れてたんだろう?
ヤマトがこんなにも、私にきつく当たる理由。
私にだけじゃなく、龍ちゃんに対しても軽蔑と嫌悪を表す理由。
それは…
「お前には、あんなドロドロした世界は似合わないよ…」
ヤマト自身が、それを体験したから、なんだ。
ヤマトがこの街を出たのは、ここには居られない事情ができたから。
ヤマトのお父さんの…
“不倫”が原因だった。
「だから、早く抜け出して普通の幸せを見つけろよ」
私は全然、わかってなかった。
確かに、ヤマトは私を心配してくれている。
でも、ここまで過剰に反対するのはそれだけが理由じゃない。
私がちゃんと話さなかったから。
誤解させることで、
私は、忘れかけていたヤマトの傷を掘り起こしてしまったんだ――