最愛HONEY



「ごめんね、ヤマト…」


「謝られても困る…って、な…なんで、泣くんだよ」



冷たく言い放ったものの、私の顔を見るなり、ヤマトは目を見開いた。


いつの間にか…
私の目からはポロポロと涙がこぼれ落ちていた。


こんな泣き落としみたいなこと、したくなかったんだけど…

出てしまったものは仕方ない。


焦りまくるヤマトを横目に、涙を拭いながら私は言葉を続けた。


「私…ヤマトのこと、いっぱい傷つけちゃったよね。」


ヤマトの気持ちに全然気づかないまま…

嘘ついて誤魔化して拒絶して…

挙げ句、嫌な過去まで思い出させてしまった。


無神経にも程がある。


「でもね、私のことは心配しなくて大丈夫だから。」


謝るのは筋違いかもしれないけど、これだけはわかってほしい。


「私は、不倫なんてしてないんだよ?」

「お前、この期に及んでまだ…「“沢木”なんだ」


唐突だとは思うけど、私はそこから切り出した。


「私の今の名字。」

「……はっ?」

「16歳のときにね、変わったんだ。龍ちゃ…“塾長”と同じに。」


わけがわからない、と言いたげに私を見ていたヤマトだけど…


「それって…」


持ち前の勘の良さで、すぐに何かを悟ったみたいだ。


「“不倫”にはならないでしょ?私が“妻”なんだから…」



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