最愛HONEY



―――…

――――――……



「……オ、ナオ!」


……ん?


「ほら、着いたぞ。」


ぼんやりする意識の中、

聞き覚えのある声と、揺さ振られる身体。


あれ…?私、もしかして…
寝ちゃってた?


「ほら、起きろって。もう家に着いたぞ」


いつの間にか、家?

え?でも…

私、あのまま塾長室で…


「……ったく。気づいたら寝てるし、起こしても起きないから…。俺が駐車場まで運んでやったんだからな?」


そっか…

じゃあ、ここは龍ちゃんの車の中かぁ…


目は覚めてないくせに、意識だけははっきりしてきた。


「ここからは自分で歩けよ?部屋まで担がせるのはナシだからな。」


龍ちゃんのこの口調からして、ここはマンションの駐車場に違いない。

だったら…


「んー…。キスしてくれたら起きるー」


ちょっとワガママを言ってみよう。


「はぁっ?」

「だから、キス。お姫様は王子様のキスで目覚めるのぉ…」

「寝呆けてないで、早くしろよ。」


冷ややかな声。

…やっぱりダメか。
今までに成功した例しがないもんなぁ。

仕方ない。あんまり長引いてもむなしいから、さっさと起きよう。

ゆっくりと。
瞼を開けた…とき。


「……っ!」


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