君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】





「立て続けに俺が話してるね。
 ごめん、でもさ……理佳さんの編曲力、本当に貸してほしいんだ。

 きらきら星変奏曲。
 あの曲は、弟が演奏してたことがあるからどんな曲か知ってる。

 俺が言うのもなんだけど、雪貴、年の割に演奏はうまいんだ。

 だけど……理佳さんが演奏してたみたいな、
 あんなアレンジは初めてだし、アレンジして演奏してる人は多いけど
 俺とシンクロする演奏には出会えてない。」


「アレンジしようと思って作り始めたものは一つもないよ。

 ただ音が頭の中で溢れるの。
 私はそれを追いかけてるだけ」

「簡単に言うけど、音が溢れだすのがすでに凄いから。
 すぐに返事しなくてもいいし、考えといてもらえないかな?」



宮向井君がベッドサイドに座ろうとした時、
ふいに扉が開いて、姿を見せたのは裕真さん。




「隆雪、来てたんだ。
 託実は?」

「グランデューティー、今実習は終わったんですか?」

「今日の実習は終わったよ。
 こんにちは、理佳さん」



裕真さんとも知り合いらしい少年は、
私にはわからない暗号のような読み方で、
親しげに会話を始める。



「グラン、俺のやりたいバンドの編曲を理佳さんに頼めないか
 今、交渉してたんです」

「そう。
 理佳さんの気持ちは固まりそう?

 連絡は貰えなかったけど、
 そろそろ動画が撮影できた頃じゃないかなって、
 お邪魔してみたんだけど……」 

「グラン、それって理佳さんから連絡が貰えなかったけど、
 託実情報で知ってて確信犯で来たんじゃないですか?」

「そうだね」
 

そんな会話を続ける二人。



その直後、「データーを貰える?」そう言って裕真さんに告げられた。


ノートパソコンを開いて、中の情報を見せると
すぐに、裕真さんはPCを触り始める。



PCの中から、朝、撮影したばかりのデーターを探し出すと
何かのソフトをたちあげて、編集作業をしているみたいだった。


そしてそのまま、作業を続けると「ファイルが共有されました」っと
画面に文字が映し出される。



「公開設定OK。

 理佳ちゃん、今日の撮影分の動画はここに更新したよ。
 兄さんが見てくれるといいね」



問われるままに私は、にっこりと笑いながら頷いた。



その頁は、再生された回数をカウントしていて、
公開直後から、再生回数が更新されていた。


ふいに、メールマークが点滅する。



「早速反応来たね」


そう言って手慣れたようにマウスを動かすと、
短い文章が、表示される。

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