君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
美加は唐突に吹っ切れたように言葉を紡ぎだした。
友達じゃなくて、ライバル。
理佳にとっては、手強いライバルかもしれないけど
多分、アイツも……理佳もかなり頑固そうに映るからいい勝負かもしれない。
それに……美加がどんな攻め方来ても、
俺の気持ちは変わることはないはずだから。
美加は理佳の真正面に立ってゆっくりと手を差し出した。
戸惑いながらも、美加の手を握り返した理佳の顔が、
いつもと違って、少し晴れているようにも映った時間。
その後、30分ほどの会話を続けて、
晩御飯の時間が近づくころ、「美加を送ってくる」っと病室を離れた。
隆雪と裕真兄さんは朝、録音してた理佳のピアノを聴きながら
会話を弾ませてた。
美加を送る帰り道、俺は美加によって頬をパシーンっと打ちつけられた。
「いってぇって」
頬を抑えながら、反射的に言い放った言葉。
俺を覗き込むように美加は告げた。
「バカ託実っ。
アンタね、学年の悧羅のプリンスなのに
女心がわかってない鈍感で、ガキなのよ。
どんだけ、自分の身の丈にあってないことしてるかわかってるの?
理佳さんは年上なんだよ。
しかも……余命だって言われてるタイムリミットはもう過ぎてる。
何時まで生きられるかわかんない人を、
どうして好きになんかなったのよ。
傷つくのは託実なのに……。
傷つく前に……、傷が浅い間に……私じゃダメなの?」
私じゃダメなの?
美加がそう俺に告げた時、
美加は……この後の俺の未来を心配してくれているんだと伝わった。
「悪い。
何言われても、俺は今は理佳のことしか考えられない」
「あの子、年上だけど何も知らないよ?
託実、絶対に苦労することになるよ。
本当にそれでもいいの?」
何度も俺を諦めさせようと、あの手この手と言葉を変えてくる美加。
そんな美加にもう一度「理佳しか考えられない」と俺の気持ちが変わらないことを告げた。