君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
「ねぇ、託実くん……。
夕方、好きだって言ってくれたの、
嬉しかったけど……凄くびっくりした。
今まで生きてきて、そんなこと言われたことなかったから。
でも……私でいいの?
堂崎さんじゃなくて……こんな私でいいの?」
理佳はそうやって言葉を続けた。
「バカかよ。
お前以外の何処にいんだよ。
ほらっ、とっとと寝ろ。
発作おこしても知んねぇぞ。
今日は……なんだ、いろいろと刺激的なことが多かったと思うから。
ほらっ、寝ろよ」
まくしたてるように、言葉を続けて
理佳をベッドに横にさせると、掛布団を掛けて俺を離れた。
翌日、二学期が始まる9月になった。
病室の窓から覗く、学園都市の風景にはチラチラと
制服を来た学生たちが視界に止まる。
始業式も病院に居る俺は、
いつもの様に朝を迎えて、病室のベッドで朝ご飯を食べる。
その後、リハビリ室へと向かって
今日のメニューをこなすと、松川先生が顔を覗かせた。
手招きされるままに、松川先生の後をついて歩く。
術後間もなくは、痛みが走っていた膝も
今は日常生活はスムーズに遅れそうなほど落ち着いていた。
「託実くん、そろそろ退院していいよ。
まだ通って貰ってリハビリは必要だし、
陸上部にすぐに戻ることは出来ないけど、
学校も今日から始まったことだしね」
そんな風に、松川先生は切り出した。
「退院って何時ですか?」
「そうだね。
早くて明日の午前中。
明後日でも構わないけど、学校が始まってるから
早い方がいいだろう」
「じゃ……明日で」
「わかりました。
明日、退院できるように手続きしておきます。
明日、詳しく今後のリハビリ計画を担当の理学療法士さんから手渡して貰うと思うけど
もう少し頑張るんだよ」
そう言って松川先生は、俺を診察室から送り出した。