君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
「自覚しろって言ってんだろうが。
隆雪も隆雪だろ。
そんなもん、今しなくていいだろうが」
そうやって心配してくれる託実くんの存在が、
やっぱり楽しくて。
「託実……宮向井君に音楽きかせて貰って嬉しかった。
まだ私の音楽を楽しめることが出来るって
噛みしめることが出来たから。
託実が心配してくれてるのも凄く嬉しかった。
有難う」
素直になれた瞬間。
あと少しだけ……勇気を振り絞ろう。
今年に入って、不整脈を繰り返すことが多くなってきたのは事実。
宗成先生に出逢ってすぐに治療でおこなって貰った手術も
一時期の時間を稼ぐものになるかもしれないって言われてた。
だからこそ……
本当に残された時間が少なくなってきてるなら、
私は音楽で、いろんな想いを届けたい。
「ねぇ、宮向井くん。
何処まで出来るかわからないし、最近体調を崩すことも多くなってるから
迷惑かけちゃうかも知れないけど、出来る限り宮向井君の夢の手伝いをするよ」
私の夢を叶えるために、手伝ってくれた人が居るみたいに……
誰かの夢を私が叶える手伝いが出来たら、どんなにいいことだろう。
ここ数年の間に、心に抱いていた……
18年間を生きた私の、メイク・ア・ウイッシュ。
『誰かの夢を助けたい』
ふと、そんな……諦めていた夢の存在を思い出した。
「理佳、なんだよ。
理佳が手伝う、隆雪の夢って」
「バンド。
宮向井君、バンドを結成して成功させたいんだって」
「隆雪、なんで理佳だけ誘ってんだよ。
親友の癖に、仲間外れか?」
「仲間はずれじゃなくて、
声かけるタイミングをはかってただけ。
託実、音楽より走ることに必死だっただろうが。
でも、こうやって晴れてきっかけが出来たってことかな。
託実、一緒に音楽しないか?」
真っ直ぐに託実を見据えて話す宮向井君の想い。
「託実、やってみたら?」
思わず背中を押すかな?っと言葉を続けてみる。