君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
二学期になって、二週間ほどそんな時間を過ごして
学院内は、10月10日に行われる体育祭の準備に慌ただしくなってきた。
俺が通う悧羅学院は、特殊な学校。
校舎は主に、悧羅校・海神校・昂燿校と3つに分かれて
普段はそれぞれの学校で勉強している学院生徒たち。
だけど学院体育祭と学院文化祭は、
三校の全ての生徒が、悧羅校舎へと集結する。
幼等部から、大学院までの全ての生徒が一堂に集まるお祭り行事。
普段は率先して、体育祭なんて燃える俺も
夏休みの手術からまた約八週間。
今もリハビリに病院に通う身では、燃えられるはずもなく
俺自身か出場できない行事に、熱くなれるほど出来たわけでもないから
ただ運営委員会に一員として、得点稼ぎにやるべきことだけ淡々とこなしているだけ。
「託実、おはようー」
「おぉ、稔。高等部の朝練行ってきたのかよ」
「まぁな。
託実、俺はお前を待ってるから。
リハビリ終わったら戻って来いよ。
先輩たち、残念がってた」
朝の挨拶の為、朝練帰りのデューティを待つ俺に
稔が話しかけてくる。
稔はあぁ言ってくれるけど、
今の俺には陸上部に戻るつもりはない。
「稔、悪いけど今は考えられねぇよ」
「あぁ。でも今は……だろ。
俺、体育祭のクラスリレー。
託実の200mと一緒に400m受け持つ予定だから、
そこんとこ宜しく」
クラスリレーは、クラス全員で走る行事。
当然、俺が棄権した分は他のクラスの奴にシワ寄せが行くのは必須。
忘れてた……。
「サンキュー。稔には感謝するよ」
「んじゃ、また学校帰りに奢り宜しく」
「稔、早く着替えろ。授業に遅れるぞ」
背後から声が聞こえたのは、
稔のデューティーである、大樹先輩。
そしてその後ろには、
俺のデューティー智樹先輩。
二人の先輩はすでに、高等部の制服に身を包んで着替え終わってた。
「あっ、やべぇ。
デューティー、大樹失礼します。
んじゃ、後で」
慌ててその場から走り去る稔。
その後ろ、
俺は自身のデューティーに朝の風習となる挨拶をする。
「デューティー、智樹。
おはようございます。
朝のティータイムはなさいますか?」
デューティーは、携帯に視線を向ける。