君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
「痛いです」
素直に答えると、「病院に戻ったら主治医と相談して、手の方にも軟膏と飲み薬を出しましょう」っと
伊集院さんは答えてくれた。
「さぁ、最後に一曲。
私とあわせてみましょうか? さっきの癖を意識して、宝珠と演奏した時よりももっとゆっくり」
そう言って、向こう側のピアノに座った私に合わせるように、
ゆっくりと演奏を始めた。
宝珠さんと演奏した時とも違った形で表情を見せるピアノの音色。
興奮が冷めやらぬままに、
久しぶりの冒険時間は過ぎていった。
その帰り道、玄関前でベースを担いで現れた託実は、
私に気が付くと、すぐに逃げるように建物の中へと入ってしまった。
久しぶりに逢えたのに、託実とはまともに会話を出来ないまま
私は病院へと戻った。
裕先生が出逢わせてくれたその人たちは、
今以上に、私をピアノの世界へと魅了してくれた。