君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】

5.学院祭LIVE決定-託実-



サンダーバードと出逢ったその日から、
俺の生活は一気に変わった。


朝起きて学院に出掛けるのは今までと変わりないが、
放課後になり次第、少しでも早く学院を飛び出して
旺希叔母さんのビルの防音室にサンダーバードを連れて籠る。


指導してくれる中山さんの元、
相棒を少しでもいい音で鳴らせるようにしたくて……
一日も早く、コイツで理佳が編曲している隆雪の曲を
演奏できるレベルまで俺自身を追い込みたくて。



まず最初の俺への試練が、TAB譜と言われるベース専用の楽譜。

理佳が見てた、五線譜とは違って
線はベースの弦の数、四本。

そこに丸印や棒線で綴られている、おたまじゃくし。


そして弾き方。
中山先生に教えて貰ったベースの弾き方は主に三通り。

・ピック弾き
・指弾き
・スラッピング

この三通りの弾き方をマスター磨るべく俺の練習メニューは組まれていく。
っと言っても、練習初日はピックの持ち方から教えられるほどの初心者。


ピック弾きでは、輪郭がはっきりした固めの音が鳴り響き
指弾きでは、柔らかく丸みのあるベースらしい音に変わる。


同じ弦を弾いても、弾き方次第でまたその音色を変える。


そんな相棒と練習を続ければ続けるだけ、惹かれ、のめりこんでいく俺が居た。



今まで俺が生きてきた中で、
こんなにも俺自身がイキイキしながら、楽しんだことってあったかな?


陸上部にこの夏、こだわりすぎてた俺自身が
バカらしく思えるほど、俺は新しく出逢った世界に飲み込まれていった。




「託実くん。
 サンダーバードを相棒にして、もうすぐ一ヶ月になるかな。

 これまでに、三種類の弾き方・開放弦を使ったピッキング。
 次に、フレットの押さえ方・弦ミュート・ドレミファソラシド。
 これらを一通りして、メロディーも演奏できるようになったね。

 凄くが頑張ってるのが伝わってくるよ。
 だけど時々、演奏フォームが崩れてしまうね。

 正しい演奏フォームを身に着けることが、うまく演奏するための上達法だよ。

 じゃ、次の課題に入ろう」


中山先生の言葉にまた新しい出逢いがあるのだろうと、ドキドキする俺。


「ロックとかに憧れてベースを始めた子が
 やりたがるのが、今から先生がするこれ。

 一昔前は、チョッパー奏法っと呼ばれていたスラップベース。
 今日はやり方を説明するから、ゆっくりと練習してみるといいよ。

 スラッピングには、サムピングとプルと二つの動きがあるんだ。
 
 こんな風に」
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