君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
ベースのどっしりとした音に絡むように重なる、
ギターの音色。
単純すぎる基本練習しか出来ていないのに、
同じように重なるギターに、体が芯から熱くなっていくのが感じられた。
やっぱり……俺はもっと、ベースをものにして
この相棒を使いこなして、隆雪たちと理佳の曲を演奏したいって心から思った。
その日の練習を終えて、帰宅して泥沼の様にベッドに眠った翌日。
学校に登校して、いつもの様にデューティとの時間を過ごす。
「生徒総会よりお呼び出し致します。
亀城託実、並びに久禮智樹は至急パレスまでお越しください」
朝のティータイムに、放送での呼び出し。
途端になんかやらかしたか?っと不安になる。
「託実、心当たりでもある?
顔色悪いけど?」
デューティー、
だから今追い打ちかける言葉やめてください……。
生徒総会からの呼び出しなんて、
今までも一度もないんだ。
「心当たりがないなら、堂々と行けるだろう。
さぁ」
そう言うとデューティー智樹は、先にパレスと呼ばれる生徒総会専用の執務室の建物に
歩いていく。
「久禮智樹並びに亀城託実です。
仰せに従い、参りました。
お取次ぎを」
学院の中でも一番セキュリティーが厳しいその場所の警備室に声をかけると、
中から宝珠姉さんが姿を見せた。
げげっ……。
やな予感。
此処……生徒総会は、そんな場所なんだよ。
裕兄さんも、一綺兄さんも、宝珠姉さんも総会関係者。
選ばれた存在。
俺は生徒の支持によって入れる、生徒会メンバーに選ばれることはあっても
理事会の支持によって入れる、生徒総会メンバーには入れることはない。
「久禮くん、託実の為にわざわざ感謝するわ。
大丈夫よ、本当に男の癖に肝が小さくてよ。
託実、彼女が出来たんでしょ。
理佳ちゃんが嘆いてよ」
そんなことを言いながら、迎えにきたその人は
パレスの中に戻っていく。
そうだよ……旺希叔母さんの娘である、宝珠姉さんは
昨日、理佳と一緒だった。
何処まで俺と理佳のこと知ってんだか……。
うなだれるように肩を落としたまま、
パレスの中へと歩いていった。
通されたのは、パレスの1階エントランスの奥にある会議室。