君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
6.LIVEに向けて -理佳-
あの日、宝珠さんたちに連れていってもらった
スタジオの玄関で出逢った託実とは、
それきり会えないまま、時間が過ぎていく。
ねぇ、何時の間に私……こんなに弱くなった?
託実の優しさを知った私は……
本当に弱くなったように感じてしまう。
毎日毎日、見舞客は誰も来ないと割り切ってた時代。
だけど今年の夏休み、託実と出逢って
私にもお見舞いに来てくれる存在が出来た。
皆の優しさを知るたびに、
私は……一刻一刻と私の命を奪っていく
この時の砂が……怖いと思った。
何時まで生きられるかわからない。
どの託実と私は……最後に逢うんだろう?
託実を拘束したいわけじゃないし、
普通に過ごしてほしい。
同情なんて真っ平。
だけど……この命が潰える時には、
託実を感じていたい……そんな風に思う私の只の我儘。
「理佳ちゃん、少し心電図の波形が乱れてたからね
覗いてみたんだけど、どうかな?」
気が付くと、宗成先生が病室に顔を出す。
「ごめんなさい。
ちょっと無理しすぎたのかな……。
すぐに落ち着くと思うんだけど……不整脈……」
「少し作業をやめて横になろうか?
横になって落ち着こう」
そう言いながら、
先生は私を支えてゆっくりとベッドに横にさせる。
ベッドの頭元は真っ直ぐにはなってなくて、
私の上半身は斜めに預けられる。
その後はすぐに診察時間になってしまったけど、
それでも私はこうやって生かされていて、宗成先生が助けてくれるから
託実のことを思う時間も繋げてる。