君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
「託実、どうかしたの?
練習は終わった?」
「今、帰ってきた。
あのさ、理佳を……学院祭に三日間滞在させたい。
アイツ、学校らしい学校通えてないだろ。
ずっと病院の院内学級って奴だったんだろ。
だからさ、アイツの妹……海神にいるって行ってたんだ。
モモって言う奴の居る学校が知りたいってさ。
こう言うのって、特別措置ないの?」
「特別措置?
父を取り込みたいってことかな、託実」
「そう。
紫叔父さんに許して貰って、堂々と理佳の特別席を作ってやりたい」
「だったら、理事会の伊集院さんにもコンタクトを取ってみるといいかも。
その辺り、裕先輩か裕真に動いて貰えたらいいと思うな。
父の方は説得しやすいように、動いてみるよ。
学院に滞在させるって言うのは、一般客とは違って生徒として学生の疑似体験ってのも
意味が含まれてるのかな?」
察しがいい一綺兄さんは、俺が言い忘れてたことに気が付いてくれた。
「理佳に学園生活、少しでも疑似体験させたい」
「だったら悧羅の制服が必要だね。
後夜祭のドレスも用意しないとね。
その辺りは、母に話したら楽しんでくれるんじゃないかな」
そんなことを言いながら、一綺兄さんは俺が動きやすいように
全て手回しをしてくれた。
結果、理佳の為に用意できた特別席。
伊集院さんの知り合いのピアノ演奏家。
理事会メンバーである、
伊集院さんのゲストであり、
三日間だけの特別外部編入生。
悧羅の制服は、姫龍伯母さんが早々に仕立てて
理佳サイズのオーダーメイド。
理佳に頼みたいことは一つ。
学院祭で……演奏を披露して貰うこと。
伊集院さんの知り合いのピアノ演奏家扱いだから、
この程度の学院の要望は受け入れてほしい。
だけど……それさえクリアしたら、
理佳は堂々と三日間学院の生徒として学院内を移動できる。
そして……もしかしたら、
アイツの妹とも逢うことが叶うかもしれない。
理事長と生徒総会の総意として、決定された特別措置の内容を
裕兄さんに伝えると、
兄さんは……その時間の演奏は、理佳と兄さんの二人で演奏するよっと告げた。
俺が仕組んだアイツへの特別席は、
いろんな人の力を借りて、現実のものになっていく。