君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
8.学院祭当日 -理佳-
ついに迎えた11月3日。
託実が教えてくれた、三日間の悧羅学院祭の初日。
いつもより早く目が覚めちゃった私は、
朝から、ドキドキしてる。
興奮して体調崩したら、それすら叶わなくってしまうのに
ドキドキは止まってくれない。
いい子にして……私の心臓。
今日から三日間だけは……いい子で居て……。
朝の回診時に姿を見せたのは、宗成先生と
久しぶりに対面した裕先生だった。
「おはよう、理佳ちゃん。
どれ、今日のご機嫌はどうだ?」
ベッドを囲むカーテンを引いて、
朝の診察の後、ゆっくりと開かれる。
「裕くん、いいよ。
少し興奮気味だから、
発作が出始めた時に必要な処置用の薬は預けておく。
準備が終わったら俺の部屋に寄ってくれ。
じゃ、理佳ちゃん。
楽しんでおいで」
そう言いながら、宗成先生は病室を出ていった。
その後、顔を覗かせたのは薫子先生と、姫龍さんの二人。
「さぁ、姫はこちらじゃ」
そう言うと、手にしていた箱をベッドにおいて、ゆっくりと開く。
質感の良い生地で誂えられた、ライラックの衣装。
タートルネックのシャツは薄い水色。
変わった形のジャンパスカートの裾はアンバランス。
巻きスカートのようにも見えるその衣装に添えられているのは、
上品な濃き紫であわせられた、パフスリーブのボレロ。
「理佳ちゃん、着替え終わったら呼ぶといいよ。
先に、宗成叔父さんのところに顔を出してくるよ」