君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
「少しだけ中に移動。
理佳、入って」
促されるように小さなドアを潜り抜けて、畳の部屋へと入ると
そこには綺麗な着物姿に身を包んだ人たちが、静かに座って待機してた。
私の後に続くように、託実も裕先生も入室する。
三人が揃った時点で静かに点てられていく抹茶。
お茶の作法なんて殆どしらないまま、放り込まれたその場所。
チラリと託実たちの仕草を見ながら、
私も見様見真似でお茶菓子とお茶を頂く。
その後は、託実のクラス当番で30分ほど私は休憩タイム。
最初の建物に戻って一室で少し休ませて貰って、1時間後にはまた
校内を散策する。
午後から学院祭の中の目玉になる芸能祭。
日本舞踊やら、雅楽の演奏。
私の演奏するステージ。
電子オルガンのステージ。
舞台・コーラス・バンド演奏など、
そう言ったお披露目の場が始まる。
その会場となる、悧羅ハーモニーホールへと続く移動の中で、
私はまたモモの絵を見つけた。
星空の中に浮かび上がる惑星。
その惑星から生えだすような真っ白い両翼。
その翼は愛しそうに何かを抱きしめているようにも見えて、
思わず手にしていた携帯カメラで、パシャリと記録に収めた。
「喜多川百花。
これがお前の妹?」
託実の声に私は、小さく頷いた。
「そう……私が傷つけてしまった
私の大切な大切な妹。
有難う……こうやって、モモが近くで見れただけで
私は充分嬉しいよ」
その絵の隣には作者紹介として、
モモの最近の写真とモモの受賞歴が紹介されていた。
小さな写真にうつるモモは、
大きくなってて……私が知ってる、小さな小さな手のモモじゃなかった。