君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】



「託実、Ansyalの正式メンバーは、
 まだ俺とお前の二人だけ。

 昂燿の廣瀬と瑠璃垣は、たまたま学院祭だから一緒にやっただけ。
 怜さん情報だと、瑠璃垣って奴は音楽する気はないんだってさ。

 んで廣瀬って先輩は、今はバンドは組む気ねぇって。
 俺、フラれた後なんだ。

 だから正式メンバーは、俺とお前。
 後は……理佳さんくらい、入れとくか……」



そんな風に隆雪は笑った。


隆雪は笑ってたけど、
だけど……Ansyalって言うバンドの結成は
アイツの夢ってことはわかってる。


俺がLIVEの出演を見送ったら、
隆雪は一人……。

アイツだけじゃ、何も出来ない。


理佳と最初のクリスマスイヴ。
そして、アイツと結成したAnsyalの最初のクリスマス。


ましてや……24日は隆雪にとっても誕生日……。




誕生日プレゼントだって思えば、
イヴのLIVEは、隆雪と。


翌日の25日に、理佳の病室に
行ってアイツと初めてのクリスマスを送ればいいか?


そんなことをグルグルと考えながら、
俺たちは1週間の期末テストを受けた。


12月第1週と第2週の半ばまでに終わった期末テスト。

その後の学院行事は、歌舞伎鑑賞・演劇鑑賞・音楽鑑賞などといった
ゆったりとした時間となり、
殆どが自習時間で、各自が自主的に苦手な科目を勉強することになる。




その頃には俺の気持ちは、隆雪と一緒にLIVEに出ることを選んだ。


クリスマスとだけ聴いていたLIVEは、
イヴがLIVEでって言うのが俺の誤算で、隆雪の誕生日の翌日、クリスマスの夜が
怜さんがセッティングしてくれたLIVEの日だった。


学校の授業は殆ど自習。 

それをいいことに、俺は教室に顔を出した後
音楽室に移動して、相棒のベースを練習する。

昼間、学校でベースを練習して、
学校が終わると、理佳の病室へ。


その頃になると、理佳は少しずつ体調を持ちなおして
また時折、ピアノを遊戯室で弾くようになってた。


そんなピアノを練習してる、理佳の傍で俺も
ケースから取り出したベースを抱えて、
演奏順どおりに弦を弾く真似をする。



一緒に居るだけで……心が落ち着ける存在。



こんなにも理佳の存在が俺にとって大きくなるなんて、
夏休みの俺には予想も出来なかった。


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