君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
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理佳ちゃん
お見舞いに来たけど面会謝絶で会えなかったわ。
前にお稽古の時に話したわよね。
今度、一緒に演奏しましょうって。
モーツァルトの2台のピアノのためのソナタを。
当日、アメジストホールで待ってます。
元気になって、二人で演奏しましょう。
羽村冴香
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「だから……」
「良かったな。
羽村冴香と一緒に演奏できるクリスマスイヴなんて。
だったら俺との約束は……
26日にでもするか……クリスマス終わっちまうけど」
そんな言葉を紡ぎながらも、
心の中はぐちゃくぢゃ。
なんでLIVE入れたんだよ。
なんで羽村もクリスマスなんだよ。
そんなどうしようもない苛立ちが俺を包み込む。
「違うの。
チケット……二枚あるから……。
二枚あるから託実、一緒に来てくれない?」
理佳の思いがけない言葉に、
一瞬、思考回路が固まるものの……
再び、覗き込まれた理佳の顔を捉えながら
俺は流されるように頷いた。
隆雪の誕生日が……
こうなったら25日か26日だな。
そんなことを考えながら過ごす12月は、
いつもと違う景色を見せてくれる季節になった。