君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
10.クリスマスの奇跡 -理佳-
託実とモモの通う神前悧羅学院で過ごした夢の三日間。
その最終日、私の演奏が終わった後、
熱っぽさを感じて、ドクターストップ。
病院に戻るまでの間に私の状態は一気に悪化した。
心不全などの重症度をはかる、BNPと言う数値が悪化したのと共に
酷い肝機能異常状態に陥ったのだと、意識が回復した私に先生は教えてくれた。
久しぶりに大きな心不全を起こした私は、
何とか命を繋いでもらって、
集中治療室で目が覚めた。
「理佳ちゃん、良く頑張ったね。
今暫く、こっちの部屋で様子を見ようね」
そう言いながらいつものように笑いかけてくれる宗成先生。
その隣には「心配かけないの」っとかおりさんが私の髪を撫でてくれた。
「宗成先生……託実がね。
今、そこに託実が来てくれて抱きしめてくれたの」
そう呟いた私に、宗成先生とかおりさんはお互いの顔を見合わせる。
「そう……託実くんが来てくれたの」
かおりさんがそう言葉を返してくれると
私は安心したように頷いた。
「託実が抱きしめてくれたから……熱を早く下げろって言ってくれたから
私、ちゃんと頑張る。
早く病室に戻りたいから」
そうやって伝えると、かおりさんも先生ももう一度笑いかけてくれて
私は再び、眠りの中に入っていった。
次に目が覚めた時も、集中治療室。
私が起きたのに気が付いた、
左近さんはゆっくりと近づいてくる。
「病室に戻れるまでまだ少しかかりそうね。
でも……ゆっくりと回復してるから安心しなさい。
さっき、羽村冴香さんが見舞いに来てくれたのよ。
理佳ちゃんは集中処置室で会えないってお話したら、
この封筒を預けていかれたの」
左近さんはそう言うと、私に封筒を手渡して
また仕事へと戻っていった。
ゆっくりと封筒を開くと、
そこにはチケットが二枚。