君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
目標があるのは、心を安定させてくれるからなのか
宗成先生たちの治療の甲斐があったのか、
11月の終わりに差し掛かった頃、
私は一般病棟の自分の病室に15時半頃帰ることが出来た。
だけど体力が低下してる私は、
起き続けることも長く出来なくて、すぐに病室のベッドに眠りに誘われていく。
目が覚めた私の前には託実があの時みたいにいて、
綺麗なドレスが飾られていた。
「理佳……」
託実は心配そうに私を捉える。
そしてその後「バカ……何、無理してんだよ」っと
言いながら、そっぽ向いた。
託実にそんな顔させたの……私だ……。
「……ごめん……」
ようやく出て来た言葉は謝罪。
「何謝ってんだよ。
それより……理佳、晩飯。
とっとと食べろ。
今から準備してやっから」
託実は……あの時みたいに抱きしめてくれなくて、
私から逃げるように、晩御飯の準備をする。
薫子先生たちから貰った、食器の中に
病院食のおかゆを、うつしていく。
……託実……に
抱きしめてほしいのに……。
「何?
どうかした?」
しーっと見つめていた私に託実が更に言葉を返した。
「抱きしめてくれないの?あの時みたいに」
ふいに零れ出た本音の後、託実が続けた言葉に私は驚いた。
「抱きしめた?
何時?俺が?」
えっ……私を抱きしめてくれたのは、
託実じゃなかったの?
だけど……あれは……ちゃんと託実だったよ。
託実が私を抱きしめてくれたから、
私はちゃんと頑張ることが出来たの。
なのに……託実じゃないなら……夢?だったの?
「あれっ?
託実じゃないの?
ベッドに横たわってた私を布団ごと抱きしめて、
『とっとと熱下げろ。いいな、理佳』って……
託実言ったでしょ?
だから頑張らなきゃって思ったのに……」
そう言った瞬間、戸惑ったような託実の体が
布団越しに私を抱きしめた。
託実が抱きしめてくれただけで、
ドキドキ鼓動が早くなってるのがわかる……。
ドキドキ早くなりすぎる鼓動は
何時もは苦しいだけなのに……今は苦しいわけじゃなくて……
ただ託実の温もりを、忘れないように沢山沢山覚えていたくて必死だった。
「手、冷てぇ。
ほらっ、あっためろや」
そうやって私の手を包み込んでくれる託実は凄く暖かい。
「託実……暖かい」
「そうだろ、寒くなったら俺があっためてやる。
だから……ちゃんと、俺のところに戻って来い。
理佳の居場所は、俺の傍だろ。今は」
いつもより何倍も優しく感じた……託実の温もりを強く感じながら、
もう少し元気になって、冴香先生との夢を一緒に過ごそう。
そしてそのメドがたったら……勇気を出して、
託実に一緒に来てほしいって頼もう。
そんな風に思いながらその時間を過ごした。