君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
託実……それって一緒に、過ごしてくれるってこと?
だけど託実は、25日は隆雪君とLIVE……。
行きたいなー。
流石にそきまでは宗成先生に怒られそうだけど……。
だけど……待って。
24日は私がリサイタルで冴香先生と演奏。
25日は託実がLIVE。
これって……二人のスケジュール、擦れ違ってる。
25日がLIVEなら、24日も託実は忙しいのかな?
「どうした?
なんか不服か?」
「ううん、嬉しいよ……。
嬉しいけど、私……24日の夜はダメなの。
もう予定入ってるの」
悲しくなる心必死に耐えながら、
ようやく見せたのは、引き出しから取り出したチケットの入った封筒。
託実はチケットを手にして、
「良かったじゃん。
憧れの羽村冴香のピアノリサイタルに招待されて」
っと、少し面白くなさそうに告げた。
機嫌悪くなった託実を感じる。
ちゃんと言わなきゃ。
一緒に過ごしてほしいって……。
「うん……良かったんだけど、違うの……。
託実……後ろ、見て」
その後の言葉は自分でも何を話したか覚えてない。
「違うの。
チケット……二枚あるから……。
二枚あるから託実、一緒に来てくれない?」
勢いに背中を押されるように、口早に言いきった言葉に
託実は暫くの沈黙の後、頷いてくれた。
その後も、順調に30分だけのピアノの練習を続けることが出来て
迎えたクリスマスイヴ。
午前中は安静時間。
午後を過ぎてから、宗成先生と伊集院先生が
病室に顔を出してくれた。
ベッドの中で、病人には似合わない
薄い水色のドレスを身に着けて、
その上から、ロングコートを羽織ってる。
「準備できたみたいだね。
理佳ちゃん、移動中は必ずマスクをつけること。
もう風邪が流行ってるからね。
理佳ちゃんの思うだけの十分な練習を先生はさせてあげられなかったかもしれない。
だけど……今日は、理佳ちゃんが楽しめるように先生は祈ってる。
リサイタル会場には、伊集院先生も付き添ってくれるし
向こうにも、羽村先生が手配してくれたお医者様が来てくれてるらしい。
その先生も心臓疾患を専門に取り扱ってる先生だから、安心するといいよ。
何もないことを祈ってるけど、先生もすぐに対処できるように待機しておく。
だから……楽しんでらっしゃい」
そう言って宗成先生たちは、私を病室から送りだしてくれた。