君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
「なぁ、集中治療室まで入れなくてもいんだ。
アイツがいる部屋の近くまでいってもいいか?」
「わかった。
その場所まで託実を送り届けて、
自分の用事に戻るよ」
そう言った裕真兄さんは、ソファーから立ち上がると
その場所までエレベーターを使って、案内してくれた。
家族専用の控室と、集中治療室と記入された扉。
控室からガウンを身に着けた人たちが、
足をセンサーの上に翳して、扉を開けながら奥の部屋へと入っていく。
ただ開いては閉じていくその扉を、
俺は無言で見つけていた。
この扉の向こうで、理佳は今も病気と闘ってる……。
『理佳、とっとと熱なんかさげて帰って来いよ。
俺は毎日、お前の病室で待っててやるから』
扉の奥に居る理佳を思いながら、
心の中でそう呟く。
「託実、少しの間そこで過ごしたら
すぐに帰るんだよ。
託実には理佳ちゃんに逢う権利はないからね」
裕真兄さんはそう言って、
その場から立ち去った。
家族控室。
そう記されたドアをあけて、奥の部屋へと入室すると
そこには荷物を入れる為のロッカーと、ソファーとテーブル。
そしてテレビ。
壁には【面会について】っと記された
1枚の紙。