君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
12.女心と初めての贈り物 -理佳-
集中治療室で生活している間、
何度も顔を出す両親。
最初は、うっとおしかった存在も
本当は凄く嬉しくて、心強かった時間なのだと思えた。
決められた時間、一回10分に満たない面会時間の為に
足を運んでくれた両親。
だけど……そんな時でも、モモの姿は見られなかった。
託実が毎日、病室に来てくれてること。
病院にはお見舞いに来られても、家族ではないために
集中治療室には入ることが出来ないのだと、お母さんは外のことを教えてくれた。
その話しかけるられる言葉に、頷くこともせず
顔を横に背けて、視線すらあわそうとしなかったけど
それでも託実の話を聞けることは凄く嬉しかった。
私がこっちの部屋に居る間に、
お父さんやお母さんが託実と話をしてたって言うのには
少し抵抗があるけど……、この部屋に居ながら外の時間を教えて貰えるのは
やっぱり嬉しかったんだ。
外の景色すらも楽しむことが出来ない、両サイドのカーテンのみが空間を仕切る存在で
部屋中には、命の音が刻まれ続けるそんな場所だから。
クリスマスの日、ベッドの上でそろそろ今頃は託実は練習してるのかなーっとか
いろんなことを想像してた。
だけで急に胸が苦しくなって、呼吸をすることすら難しくなって
私は意識を失った。
心不全を起こしてしまった私は、宗成先生たちによって
そのままオペ室に運ばれて、体内埋め込み式の人工補助心臓を付けられて
一命をとりとめた。