君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
今までも、弁の手術をして、カテーテルで血栓を取り除く手術をして……。
今日まで生きてくる間にも、
いろんな治療をたくさんして貰って、繋がれてきた命。
胸に出来た大きな傷は、今も消えることもなくて
その傷が増えるたびに、私が生きてきた証が刻まれ続けるみたいだった。
人工補助心臓も、何度か宗成先生からの話はあった。
だけど……その当時の私には、子供用の人工補助心臓は日本には認可されていなくて
古い大人用の体外式人工補助心臓と呼ばれる大きなものだった。
元弥君が付けていたのが、それだったけどベッドから動けなくなる。
病院から退院が難しくなる、そんな目の前の可能性を奪われるような選択は
自分では選びたくなくて、ずっとずっと逃げ続けてた。
今回、起こした心不全。
心不全から一度、心停止を起こした私の体は
他の臓器にもダメージを強く残した。
感染症のリスクが強くても、あの大きな人工補助心臓をつけて
ベッドに縛られながら、
心臓移植を待ち続けていればこんなことにならなくても良かったのかもしれない。
だけど……これもまた私が自分で選んだ代償。
心停止の影響で、腎臓と……前から調子を崩し始めてた肝臓への影響が強くなった。
心臓の方を、補助心臓で手伝って貰えるようになっても
肝臓と腎臓を悪くした私に、もう心臓移植の選択肢は残されていなかった。
多臓器不全……そうなるリスクと闘いながら、
いかに自分らしく、生きていくか。
それが今の私に本当に残された道。
それでも私は生かされて生きてた。
「理佳ちゃん、調子はどうだい?」
いつもの様に病室に顔を出してくれた宗成先生は
いつもと変わらない診察をする。
「理佳ちゃん、そろそろ病室に戻ってみるかい?」
宗成先生は診察の後、そう言葉を続けた。
思わず頷く私。