君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
「……告白する日?……」
「そうよ。
こ・く・は・く。
もう一つ付け加えれば、1月28日は託実の誕生日だったわけ」
「託実は……1月が誕生日だったの?」
「あぁー、もう……アンタ、本当に託実の彼女?
彼氏の誕生日くらい聞き出しなさいよ。
毎日、託実のお父様に逢ってるんでしょうに」
「うん。
宗成先生にはあってるけど……そんなこと考えもしなかった」
そうやって答えると、
堂崎さんは脱力したように大きく溜息を吐き出した。
「幸せ逃げるよ」
思わず続けた言葉。
「幸せが逃げたらとりあえず理佳のせいだから。
ほらっ、バレンタインと誕生日の情報をわざわざ私があげたのよ。
後は、凄く凄くお節介だと思ったけど
もう一つ用意してきたわよ」
そう言うと、堂崎さんは鞄の中から
箱に入った、大きなチョコを取り出した。
「病院のベットでも、何も出来ないだろうから
私がセッティング」
そう言うと、私が散乱させていた五線譜を一気にまとめて端にのけると
テーブルの上、私の正面にチョコレートを置く。
もう一つの取り出した者は、セロハンの中に詰められた何か。
緑色の何かが入ったセロハンの三角錐の先端をハサミで少し切って、
彼女は、チョコレートの隣の箱に葉っぱのような飾りを器用に作り上げる。
「中に詰まってるのは、抹茶のチョココロネ。
それで作ったデコレーションがこれ。
これ、参考にアンタも作ってみて」
そう言って私に手渡す。
柔らかい感触のあるそれを触って、
同じように見様見真似でするけど、うまく作れない少し歪な形の葉っぱ。
何回か練習して絞り出して、一番上手く作れたものを選び出す。