君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
そんな作業をしている間に、同じような三角円錐のもう一つを取り出して
同じようにハサミで先端を切る堂崎さん。
見た感じ、三角円錐の先端が凄く細いように見えた。
「んじゃ次はこっちね。
先端は細くして、文字をかけるようにしてるから
好きなメッセージ書いて伝えなさい」
そう言って、堂崎さんは新しい三角円錐を手渡した。
三角円錐を握りしめて、
暫く固まる私。
メッセージ……メッセージ……。
堂崎さんは、固まってる私に配慮してか
少し席をはずして病室から出ていった。
バレンタイン。
告白する日。
だけど……ハートマークも、好きって言葉も
今の私にはかけそうになかった。
意を決して、ようやくチョコレートに書き始めた文字は
カタカナで、【ゴメンネ】。
長方形のチョコレートを横置きにして、
立幅の半分以上にもなるむスペースに、よれよれと書き込んだ文字。
「って、理佳。
もうぅー、本当にバレンタインの意味わかってる?
ゴメンネって何よ、ゴメンネって」
何時の間にか戻ってきた堂崎さんは、
私の綴った文字を見て、イライラするように言葉を続けた。
「じゃ、もう一言付け加える」
そう言って再び、神経を集中させて書く文字。
アリガトウ。