君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
「おぉ。
ほらっ、プレゼントもとっとと見ろ」
そう言いながら、手にしていた袋を理佳へと押し付けた。
ピアノの鍵盤の模様が入った、
キルティングと言われる布で作った単純な鞄。
「凄くレアだぞ。
生まれて初めて作った鞄だからな。
形だけはいいだろう。
けど、なんだ……布はひっくり返すな。
縫い目は見なくていいから」
そう言うと、アイツは楽しそうにくすくす笑いながら
俺の前で、鞄を裏返す。
裏側なんて散々だ。
縫い目・切り目の印をつけた後に……ガタガタの縫い目。
そんな裏事情を見つめながら、アイツはクスクス笑いながら
俺の反応を見て楽しんでるみたいだった。
どんな形でもいい。
久しぶりに俺が理佳の笑顔を見れた瞬間だった。
「あっ……そのマフラー」
ふいに気が付いたように、理佳が呟いた。
「って今頃かよ。
理佳、気が付くの遅いんだよ。
お前が渡したプレゼントくらい、とっとと気が付けよ」
そうやって言い返すのは、照れくささを隠したいから。
本当は……貰って嬉しかったから、
肌身離さず使い続けたかった。
「使ってくれて有難う」
「あぁ。
ちゃんとあったかいぞ」
「うん……」
理佳はもう一度、嬉しそうに俺を見て笑いかけた。
「なぁ、お前の誕生日は?」
ちょうどいいきっかけが出来たような気がして、すかさず問いかけてみる。
「四月一日」
「四月一日って、後二週間くらいってことか……。
そっか……来月、誕生日か……」
「何か欲しいものとかあるか?」
プレゼント調査をするように続けて問いかける。