君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】


四葉のクローバーの小さなペンダント。


冴香先生からは、
いつもの様にメッセージカードが午後から届く。



1日中、誰かが順番に病室を訪ねては
誕生日を祝ってくれて、短い一日が過ぎてしまった。




夕方、朝からずっと一緒に居た託実が、
私の両親たちの前で、話を切り出した。





「理佳……海に行こう。
 だけどすぐはダメだ。

 親父と相談したんだ。
理佳が海に行きたいって思ってることも踏まえて。

 親父、いいって言ってくれた。

 ただし条件がある。

 その外出は一泊二日のみ。
 行先は、伊舎堂家の……親父の実家の別荘」

「託実くん、だけど娘は……」




託実の言葉にトキメク私。

だけどお父さんはすぐに、
託実の言葉を否定しようと言葉を挟む。



だけど私は病気で……今は、心臓だけじゃなくて、腎臓も肝臓も悪くなってる。
体の中の水分を制限して、少なくしてるから、血液もドロドロで血栓が出来やすい。

そんな状態だから血栓が出来にくいように、血をサラサラにする薬も飲んでるから
少しの出血でも大変なことになる。


そんな状態だから、外出なんてさせられない。





お父さんが続けような言葉は何となく想像できて、
私はあえて、体を窓側へと向けて、視線をそらした。






だから海には行けない……。


最初から、諦めていたはずなのに
なんで……託実に話しちゃったんだろう。



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