君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
「理佳のお父さんもお母さんも話は最後まで聞いてください。
ほらっ、理佳もこっち向けよ。
ちゃんとその辺りも親父と話してる。
俺、こう見えても理佳の主治医の息子。
理佳のことは親父にきけば早い。
守秘義務とかがあって突っ込んだことは出来なくても、
親父を味方につけることくらい出来る。
旅行の条件は、理佳のおじさんとおばさんが一緒に来ること。
俺の親父と、母さんも一緒についてくる。
気が向いたら、兄さんたちも顔を出すかも知れない。
それは今の俺にはわかんないけど。
後は、その別荘の近くにここの姉妹病院がある。
だから何かあれば、すぐにその病院で親父が直接処置できるってこと」
託実はそうやって、
話してくれた。
最初は渋ってたお父さんも、お母さんも
その後何度か、お互いの顔を見合わせて……私に話しかけた。
「理佳はどうしても行きたいの?海」
水着で砂浜を走れなくてもいい。
裸足で砂浜をかけて、寄せてくる波に足を濡らされなくてもいい。
ただ……少し離れた砂浜に座って、
寄せては返す波を見つめながら、潮を感じるだけでもいい。
波の音を聞くだけでもいい。
それだけでもいいから……
海に出掛けてみたかった。
問われた言葉に、
私はゆっくりと頷いた。