君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
お父さんやお母さんが、私のお願い通り、
逢いたいっと思ってる人達に連絡をしてくれた。
それは、宗成先生たちも協力してくれた。
忙しいリサイタルの合間に、駆けつけてくれたのは
冴香先生。
冴香先生はあのクリスマスイヴのリサイタルのDVDを
私に握らせた。
「理佳ちゃん、きっとまた一緒に演奏しましょう」
そう言いながら、冴香先生はお仕事へと戻っていった。
その夜は、託実やお父さん、お母さんたちと
そのDVDを病室で楽しんだ。
託実は毎日、顔を出してはベースを演奏する真似をしたり
何時もみたいに笑ってた。
そんないつもと変わらない仕草を見せてくれる託実は、
私にとって、凄く優しくて……そんな託実に、
私自身もいつもと同じ日々を過ごせるような気がした。
病室に戻ってから四日間くらいたった頃、
日本に居るはずのない、裕先生が顔を覗かせた。
「裕兄さん、遅いよ。
理佳、待たせてんじゃねぇよ」
託実はそう言いながら、裕先生を病室に招き入れた。
「久しぶりだね。理佳ちゃん」
聴きたかった優しい声に、
私はただゆっくりと頷き返す。
「理佳、俺少し席外す。
裕兄さんと少しの間過ごしたらいいよ」
託実はそう言って、病室を出ていった。
いろいろと話したいことはあっても、
話すことは出来なくて、
ただ黙って一緒に過ごしただけの時間。
「理佳ちゃん、あの後……何か曲を作った?」
その問いかけに、
「ひ・き・だ・し」
っとだけ、ゆっくりと答える。