君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】














アイツが天へと還りはじめる時間。


喪服姿のアイツの父親と母親が、
俺の傍へと近づいてきた。









「託実くん、それに託実くんのお友達も
 今日は理佳の為に有難う」



そう言って切り出した後、
アイツの両親は、俺に紙袋を手渡した。









斎場の椅子に腰掛けて、
紙袋の中身をゆっくりと確認する。









その中から姿を見せたのは、
アイツがずっと書き続けてきた、五線譜。




その五線譜には、俺には今も理解できそうにない
おたまじゃくしが泳いでた。





「託実、これは?」

「理佳がずっと病室で書いてた楽譜」

「ねぇ、託実。

 ちょっと待って。
 この楽譜、裏になんか書いてない?」




ペラペラっとめくっていた俺に、
美加がそう言って言葉を止めた。




< 244 / 247 >

この作品をシェア

pagetop