君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
アイツが天へと還りはじめる時間。
喪服姿のアイツの父親と母親が、
俺の傍へと近づいてきた。
「託実くん、それに託実くんのお友達も
今日は理佳の為に有難う」
そう言って切り出した後、
アイツの両親は、俺に紙袋を手渡した。
斎場の椅子に腰掛けて、
紙袋の中身をゆっくりと確認する。
その中から姿を見せたのは、
アイツがずっと書き続けてきた、五線譜。
その五線譜には、俺には今も理解できそうにない
おたまじゃくしが泳いでた。
「託実、これは?」
「理佳がずっと病室で書いてた楽譜」
「ねぇ、託実。
ちょっと待って。
この楽譜、裏になんか書いてない?」
ペラペラっとめくっていた俺に、
美加がそう言って言葉を止めた。