君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】



松川先生は、ナースコールのボタンを押して
左近さんに車椅子を頼むと、
すぐに病室に車椅子が運び込まれた。




ベッドから体を起こして、
車椅子へと移動すると、暫くぶりに
トイレ以外で病室を出ることになった。



車椅子を後ろから押すのは親父。

俺の隣を心配しそうに歩くのは母さん。



白衣姿の親に囲まれてる俺。


俺が移動してる間も、親父にも母さんにも
いろんな患者さんや、患者さんの家族が話しかけてきていて
その度に、親父たちは交流しながら、
前に一度だけ行ったことのある、検査室へと向かった。



そこでもう一度、一通りの検査を受ける羽目になった俺は
その後、家族三人で正式に治療方針を定める話し合いの場に連れていかれた。



検査結果のデーターと、人体模型を机に置いて、
松川先生は、俺の膝の故障している部分を細かく説明した。



一度きいた名前は、すでに俺の頭の中から消えてしまっていたけど
その病名がもう一度、自分の中に馴染んだ瞬間。






左膝前十字靭帯損傷。

それに加えて、俺の場合は半月板と言われる部分も
損傷しているのだと説明された。



今の俺の靭帯は、緩んだまま。


ジャンプ・着地・ダッシュ・ターン・ストップなどの
急激なスピード変化の運動は一切不可。


そして膝崩れと言われる前方回旋亜脱臼が起こりやすくなる。


無理な練習が、
膝に負担をかけて半月板まで損傷したのかもしれないと言う話だった。、





手術前の術前リハビリ。

理学療法士と言われる先生がついて、
手術を終えた後の回復がスムーズにいくように
術前リハビリが必要なことを告げられた。


膝の曲げ伸ばしの回復が遅れないように、
ももの筋肉が痩せて力が入りにくくなる為、
それを少しでも和らげるために、先にリハビリで整える必要があるっと言う話だった。



術前リハビリが終わったら、
次は手術。



断裂した靭帯を体の組織のどこかを代用して
作り直すと言う話だった。



手術の後は、術後のリハビリ。


膝の関節・可動域・筋力・歩行。
そういったものを中心にするのだと説明された。





勢いで同意したものの、
やっぱり不安は残る。





そして……最後に松川先生が告げた一言が、
俺を突き落とした。


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