君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
お皿を変えただけで、
こんなにも食事って印象が変わるんだな。
そんなことを思いながら、
俺は自分から箸を持って食事に手を付け始めた。
食べながら感じるのは、
向かい側のベッドの住人。
時折、こっちをじっと見る視線を感じて
俺を向こうを見るけど、
すぐにソイツは目をそらす。
そして、二口・三口だけ食事を口元に外すと
見向きもせずに、再びベッドに横になった。
二人の兄さんたちが退室した後、
俺は、まだ眠れない体を起こしたまま
アイツをじっと見つめる。
そんな視線に気が付いたらしいアイツが、
ベッドから体を起こして俺に向き直った。
視線が合う俺。
何か、アイツを気遣う言葉でもかけよう。
そう思って口を開きかけた時、
アイツは、爆弾を投下する。
「何見てるの?
それに……私、知ってるんだから。
入院したその日から、
君は一切治療してない。
拒絶して、迷惑かけて。
それでも……ちやほやされて。
甘えないで!!
託実くん、君は幸せじゃない?
やりたいことを少しでも経験して
楽しい時間を過ごしてる。
手術したら治るんでしょ?
だったら早く治して、
ここから早く出て行きなさいよ。
私に平穏な時間を返してよ。
私は……どれだけ治療を続けても、
手術を頑張っても、
自由に慣れない、一時的に症状を緩和させるだけ。
どれだけ頑張っても、自由に慣れないの。
だけど君は違うでしょ」